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2018.1.718:00
[認知症×音楽ライブコラボ 終了]どうもありがとうございました。
ライブが無事終了いたしました。どうもありがとうございました。
以下、お話と演奏の概要を掲載させていただきます。
◎ご挨拶・自己紹介
新年明けましておめでとうございます。
私は普段は医師として精神科専門老人保健施設での認知症の診療に携わり音楽療法などにも取り組む傍ら、自身の楽曲制作も行っております。
認知症についてもっと一般の方にも正しい認識を持っていただく事ができたらいいなと思いから、今まで続けてきた楽曲制作や音楽の演奏というものと認知症のお話を合わせたらどうだろうかと思い至り、「認知症×音楽ライブコラボ」という形でライブを開催させていただきました。
また最近、認知症や精神科の分野で音楽療法の効果がだんだん認められて来ているようです。あくまで進行予防や心理的な面でのリハビリの一環ではありますが私も職場の作業療法士さんと協力して定期的に施設内での演奏会を開催して入所者の方々と演奏したり歌を歌ったりしています。その傍ら制作してきた自身のオリジナル楽曲を、ピアノ弾き語りで披露させていただきたいと思います。
♫「In This World」作詞:チルル 作曲:小林知佳
曲説明:何かつらいことがあったときに捉え方は様々で、考え方を変える事は簡単な事ではないですし安易な励ましは必ずしもいい事とは思いませんが、少し視点を広く持つ事で見方が変わる事はあるかもしれません。この曲では普段忘れがちな「世界は広くて僕らは何でもできる 生きているだけでまるもうけ」といったメッセージを3拍子のメロディーでお届けします。
◎老人保健施設でのお正月
新年を迎え、老人保健施設の認知症の方々に新年の挨拶をしました。しかしながら、認知症の代表的な症状の一つとして見当識障害というものがあります。今の日時や今いる場所・自分の年齢や家族や友人などについて、認識が障害されてしまうというものです。なので今がお正月ですよということはわからない方も多いです。それでもみなさんでお正月の雰囲気を共有する、そういう刺激や、たとえすぐに忘れてしまうとしても一時の過ごし方というのはとても大事なことだと思います。私のところの施設ではスタッフの方々が手作りのお正月飾りを飾ってくれてすごくいい感じのお正月モードになっていました。私も認知症の方々に「明けましておめでとうございます」と挨拶をして回りました。
お正月といっても華々しいものや伝統的なものばかりではなく、それぞれに合った形でお祝いをしていますよということで、施設でのお正月の様子をご紹介致しました。
♫「GOGOGO」作詞作曲:小林知佳
曲説明:「何があっても流されずにまっすぐGOGOGO」というメッセージのアップテンポな曲で、編曲・アレンジしたカラオケと弾き語りを合わせて演奏します。
◎認知症の代表的な症状:記憶障害
今年2018年になりましたが今後高齢者の数はどんどん増えて行く傾向にあります。それで2025年には65歳以上の方の数が約3500万人になって、その時には認知症になる人が700万人くらいということで65歳以上の方の大体5人に1人が認知症に罹患すると言われていますので認知症は今後ますます身近なものになっていくことが予想されます。一方世間では高齢者にまつわるいろいろな事件や事故・虐待などがあるようですが、今後の傾向を考えますと認知症に対する正しい理解や対応の仕方というものを広めることが必要なのではないかと感じています。一概に認知症といっても実は種類や原因も様々で症状もとても色々なものがありますが、認知症であれば必ずみられる大事な症状を専門的な言葉では中核症状といいます。中核症状には見当識障害や記憶障害、失認(ものを認識できない)・失行(日常動作が行えなくなる・例えば着替えができなくなる)・失語(言葉のやりとりができなくなる)や実行機能障害(物事の段取りができない)や判断力の低下といったものが挙げられますが、一番代表的なものはやはり記憶障害なのではないでしょうか。認知症の方は数分前のことでもすぐに忘れてしまいますが、単純な物忘れと大きく違うところは、忘れたことへの自覚がないというところです。単純に忘れっぽいだけでしたら今日のお昼ごはんに食べたものがなんだったかなとなかなか思い出せないという自覚がありますが、認知症の場合は食べたこと自体を忘れてしまって、忘れたこともわからないので実際は食べ終わったばかりでもご飯まだ?と何度も同じ事を言うことになります。これは目の前には見えていなくても、脳の萎縮や脳の神経細胞の障害によって引き起こされている症状なのですが、なかなかそのように捉えることが難しいためか家族の方が言っている事を文字通りに返してしまって、さっき食べたでしょとか何回も同じ事を言わないでよと怒ってしまいますと、本人にとってもご家族の方にとってもストレスになってしまいます。まずは今やったこともすぐに忘れ、忘れていることもわからないという記憶障害の性質についてご理解をいただければと思います。その上で認知症の方への対応の基本として怒らないということを原則として、ごはんはもうすぐだよとか、あるいは食べてましたよと言うにしても口調が大事になります。認知症の方は言われた内容の理解力は落ちても相手が怒っているとか優しく接してくれているとか、そっけないとか馬鹿にされているとかそういった雰囲気は伝わりますので怒る事によって余計に混乱してしまって落ち着かなくなって症状がわるくなるという悪循環になってしまいます。本人はあくまでも不安な状態にあるということを前提に、安心させる方向で、対応ができるといいと思います。
♫「Wonderland」作詞作曲:小林知佳
曲説明:この曲の中ではWonderlandというのは「人生の行き止まりの場所に入った時にたどり着く場所」という設定で10年後はどうしているかわからないけどいまはそこで楽しんでいる、でもそれがやがて終わってしまって次の世界にいくという内容です。捉え方によってはちょっと認知症に通じる部分がある気もしていますが、聞いてもらえたらと思います。アレンジ面では色んな音が入って仕上がっていますので、こちらもカラオケと合わせて、演奏します。
◎認知症の捉え方は様々・職場の方々の言葉の紹介
・看護師Nさんより
「認知症は神様からのプレゼントだと思う、認知症にならなければ死への恐怖でつらくなってしまうだろう」
・介護の職員のYさんより
「認知症の人は今のことはすぐ忘れてしまうんだけどそれでも今笑っていて欲しい」
・看護師Kさんより
「認知症は本人も大変だけど家族や介護の方はもっと大変だ」
「笑う事は私たちにとっても流れの中の一時のことであって、それは認知症の人でも同じ事だ」
確かに私たちも笑うのは一瞬・一時のことでずっと笑っている訳ではないですし、認知症の人はどうせ忘れてしまうから笑わなくていいのかといったらそういう訳ではないと思います。同じ生きている時間を笑って過ごしたいというのは認知症の方でも同じですし、残りの時間という意味でも認知症の方は発症してから大体平均余命10年から15年と言われていますのでその間できるだけ穏やかな気持ちで過ごしてもらいたいと思います。そして話している中で認知症の方はかなり認知機能の低下が進行していても会話のやり取りの中でのユーモアがわかってもらえる・保たれるということを私はとても興味深いなと思っているのですが是非そこを大事にして認知症の人を笑わせていただけたらと思います。
いずれにしましても、認知症の捉え方は人それぞれありますが決して悲観的なものばかりではないのだという意味でご参考になればと思います。
♫「ミラクルロード」作詞作曲:小林知佳
曲説明:施設にいる認知症の方は特に夕方になるとみんなお家に帰りたいと言います。明日帰れますよと一時の安心のために答えたりしますがほとんどの方は家に帰れる明日はきていません。認知症は治らない病気ですが奇跡がおきたらいいなという思いを込めてかいた曲です。
お越しいただいた皆様、どうもありがとうございました。